簿記を勉強していて最初につまづくのが借方と貸方です。
この二つの関係は、説明を受けてすぐに理解できるものの、簿記の勉強を進めていたら、すっかり抜け落ちてしまい、大混乱のもとになることも少なくありません。
そこで今回は、改めて借方と貸方はどんなものかという点を解説しつつ、簡単にこれらの違いを分かる方法を中心にまとめました。
この記事を読めばきっと、簿記で苦戦する借方と貸方について理解できるでしょう。
わからないと感じやすい借方と貸方が出てくる根本的な表である貸借対照表から説明しましょう。
貸借対照表とは借方に資産、貸方に負債と純資産を置いた表になります。
この表の形をもとに帳簿の勘定科目や金額を記載していきます。
そして、それらの金額を先ほどの形でまとめた物を完成した貸借対照表として決算書の一部となるのです。
ちなみに借方と貸方の違いは混乱しやすいものの、簡単に言えば資産が増えたり費用が発生したら借方、借金が増えたり純資産が増えたり、売り上げが発生したら貸方になります。
この事実は知っているものの、借方と貸方がイマイチわからないという方も多いため、次の項目では借方と貸方の簡単な理解の仕方を紹介します。
帳簿(複式簿記)をつけていて右と左のどちらが借方と貸方かわからなくなる方のために簡単な覚え方を紹介しましょう。
まず、借方(かりかた)は、「り」が左手側にはらっているので左側に書きます。
同様に貸方(かしかた)は、「し」が右手側にはらっているので右側に書きます。
借方と貸方で一文字だけ違う「り」と「し」に注目して覚えると、分かりやすいのではないでしょうか。
ちなみに、このように分けて書く理由として挙げられるのは、お金の動きが発生した「原因」と「結果」をそれぞれ書くという意味があります。
原因と結果をかくことによって、お金が入った理由や物が出て行った理由を詳しく記録し、お金の動きが事細かに分かるようになります。
例えば、現金で1万円の材料を仕入れたとします。
この場合、借方に仕入れで1万円支払ったことを記載したら、貸方に現金1万円を記載します。
次に預金から20万円を下ろした場合は、借方に普通預金20万円と記載し、貸方に現金20万円と記載するといった形です。
このような記載の仕方について5つの場面から解説していきましょう。
左に借方、右に貸方と書くのは理解できたけど、どの項目をどっちに書いて良いか分からないという方も多いはずです。
そこで記載することが多い5つのパターンを理解することによって、どちらへ書けばいいか分かるのではないでしょうか。
そのパターンとは、次の5つです。
・資産
・負債
・純資産(資本)
・費用
・収益
まず、資産とは預金や手元の資金、土地や建物などの財産すべてをいいます。
この資産が増えるイベント(例えば預金に利子がついた)場合は借方に記録しましょう。
一方で、資産が減るイベント(例えば材料の支払をした)場合は貸方へ記録します。
次に負債とは、借金です。
借入金やクレジットカードの支払といった、まだ支払いが済んでいないお金を言います。
この場合は、資産と逆の書き方になります。
まず、負債が減るイベントが起こったら借方へ記載します。
一方、負債が増えるイベントの場合は、貸方へ記載しましょう。
純資産(資本)は、イメージがしにくいものですがあらかじめ用意したお金のことで、返す必要がないものになります。
例えば、自己資金分の開業資金や物ではあらかじめ手元にあった自動車などです。
この純資産が減るイベントが起こった場合は、借方に記載します。
一方で増えるイベントの場合は、貸方へ記載しましょう。
費用は、収益を出すために使ったもので現金で購入した材料などが挙げられます。
この費用が増えるイベントが合ったら借方に記載します。
一方で、費用が減るイベントがあった場合は貸方に記載します
収益は儲けです。
事業によって財産が増えることを意味します。
ここで収益の減少するイベントがあった場合は借方に記載、増加するイベントが合った場合は貸方に記載しましょう。
借方と貸方は原因と結果という関係なので、並行することが多い組み合わせになります。
例えば貸方で負債が減ったとき、貸方で資産が減った、あるいは貸方で負債が増えたといった記載をする形です。
ここまでいろいろなケースについて解説してきましたが、具体的な例を挙げていくと理解しやすいでしょう。
ここでは、3つのケース
・商品を売ったケース
・ATMから現金を引き出したケース
・接待を行ったケース
上記について解説します。
まず、一番シンプルな商品を売ったケースですが、1万円の商品が現金で売れた場合で紹介します。
この場合は、「商品が売れたこと」、「1万円の現金が入ったこと」の2つのイベントが発生する形です。
この2つのイベントを分けると、商品が売れたことは「収益の増加」、1万円の現金が入ったことは「資産の増加」(手元の資金が増えたので)になります。
さらに収益が増加することは、先ほどの項目の解説を参照すると貸方に記載する形です。
一方で資産の増加は、先ほどの項目の解説を参照すると借方に記載するという形になります。
ここで、簿記の上では一行に借方(原因)として「売上 1万円」、貸方(結果)として「現金 1万円」という記載です。
次にATMから10万円引き出した場合は、「手持ち資金に現金10万円が入ったこと」、「預金から10万円引き出したこと」に分けられます。
この2つのイベントについて分けていくと、手持ち資金に現金10万円が入ったことは、借方になります。
一方で、預金引出しで10万円減ったことは貸方になります。
この場合は、現金を資産の増加、預金の減少は資産の減少という形で仕分けする形です。
最後が取引先で接待を行って飲食代5万円と車代1万円を現金で支払った場合です。
これは、借方に「接待」、貸方に「飲食代と車代」(現金)の記載をします。
この場合は原因と結果に分けることから始めます。
接待で交際費を使った原因に対して現金で6万円使ったという結果が出てくるでしょう。
ここで原因と結果に分けたら、次に勘定科目を当てていく作業を行います。
原因(借方)となる接待を行った費用を交際費として振り分けます。
次に結果(貸方)となる現金を記入します。
これによって、借方に交際費6万円、貸方に現金6万円という記入ができるのです。
最後に借方と貸方の仕分けをするコツとして、分かる所から埋める、借方と貸方の金額を一致させるという点です。
借方と貸方が分からなかったら、取りあえず原因か結果かに分けて借方と貸方のいずれかを埋めることです。
これによってその仕分けの全体像が少しわかってくるので、それを足掛かりにしていきます。
足掛かりのヒントとして、借方と貸方の金額を一致させることです。
借方と貸方のいずれかの金額がわかっていれば、それに一致する項目を見つけて記載するということができます。
例えば現金が5万円減ったという事実(結果)に対して、何が原因か調べたら材料を5万円使っているという原因が見つかって仕分けができたということになります。
このようにしてわからないと思われがちな借方と貸方を分かる範囲で記入し、借方と貸方を理解していきましょう。
簿記は受験者が多い人気の資格の1つです。「資格を取得すれば就職時に有利になるはず」と考えている方も多いでしょう。しかし、簿記の資格は就職に関してあまり役に立たないという評価もなされています。本記事では、簿記の資格の概要や、就職の役に立たないと言われる理由を解説。併せて、簿記を就職時に活かすためのポイント・注意点なども紹介します。
簿記とは、日々の金銭・物品の出し入れを帳簿に記録し、最終的に決算業務につなげる作業のことです。企業の経理業務として行われていることが簿記と言えます。そして、簿記に関して一定の知識・スキルを有していることを証明するのが簿記の資格です。簿記の資格には「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」などがあります。資格検定を行う主体が異なる他、各検定によって傾向の違いはありますが、どの資格検定においても簿記の専門的な内容が出題されます。
この資格の取得により、簿記に関する専門性を有していることを客観的に示せるでしょう。また、資格取得を目指す中で、簿記のスキルをより豊富に身に付け高められます。経理業務を行う上で有効な知識・スキルを身に付けられる簿記ですが、一方で就職の際には「あまり役に立たない」という評価もよく見られます。一般的な認識で言えば、資格は就職時に有利に働くものです。中でも、簿記は業務に活用しやすい資格なので持っていれば仕事の役に立つはずですが、なぜ就職で役に立たないと言われやすいのでしょうか。
簿記が就職に役立つかどうかはケースバイケースです。「あまり役に立たない」という見方もされています。その理由として大きいのは、簿記の資格の希少性です。一般的に取得するのが困難な資格ほど、企業への大きなアピールポイントになります。なぜなら、難しい資格を取得していることは、高いスキルを持っている客観的な証明になるからです。しかし、簿記検定は受験者が非常に多く、また難易度もそれほど高くはありません。多くの人が有している資格であるため、就職で大きくアピールできるほどの希少性がないのです。
また、経理業務は簿記の資格がなければ対応できないというわけではありません。業務を行っていく中で必要な知識・スキルはある程度身に付けられます。例えば、経理未経験で簿記の資格を持っている人と、経理業務を経験していて簿記の資格を持っていない人であれば、資格を持っている方が有利とは言い切れません。実践経験のある人の方が経理のいろはを知っているだろうと企業が判断する可能性も高いでしょう。このような理由から、簿記の資格を持っているだけで就職が有利になると言えない部分があります。
簿記は持っているだけで就職が有利になる資格とは言い難いですが、活用の仕方によって武器にすることは可能です。ここでは、簿記の資格を就職に活かすための具体的なポイントを紹介します。
簿記は難易度が高くなく、多くの人が有する資格だと前の段落で述べました。しかし、簿記の中にはいくつかの級があり、級によって難易度が異なります。例えば、日商簿記は1・2・3・初級の4種類に分かれています。この中でも3級と初級は資格保持者が多いため、特別なアピールはしにくいでしょう。就職の武器にしやすいのは2級と1級です。簿記2級は商業簿記だけでなく、工業簿記も加わり、より専門性の高い内容が問われます。3級は合格率が約50%であるに対し、2級はグッと下がり合格率は20~30%ほどです。また、1級になるとさらに難易度は増します。1級の合格率は毎年おおよそ10%ほど。行政書士や社会保険労務士など一部の士業資格や応用情報技術者といった専門性の高い難関資格と同等の難しさがあると言われています。経理や簿記の初心者はまず合格できない資格なので、持っていれば就職の際大きなアピールになるでしょう。簿記の資格を持っていることを全面的に活かしていきたいなら、上級レベルの取得は必須です。取得は簡単ではありませんが、合格できれば大きな武器を得られるとともに、合格までの過程で高いレベルのスキルを身に付けられるでしょう。
簿記資格だけでアピールするなら難易度の高い級が必要ですが、経理の経験とセットでアピールすれば企業に気に留めてもらえるかもしれません。例えば、経理業務の経験があることに加え、簿記の資格を有している人であれば、資格を業務に活かして働いてきたというアピールはできます。経理の経験年数は企業にアピールできますが、その人がどのようなクオリティの働きをしてきたかはわかりません。そこで、経理の経験と資格の保持をセットでアピールすることで、企業は「この人は資格を有するレベルの専門性をもって、経理の仕事を行ってきたのだろう」と判断する可能性が高くなります。応募書類に素晴らしい内容が羅列されていても、実際に入社した後質の高い仕事をしてくれるとは限りません。書類だけ輝かしい人という可能性もあります。しかし「経理経験がある」「資格を持っている」この2つが揃っていれば、良い仕事をしてくれる信頼性は高くなります。資格を就職に活用する場合は、経理の経験も組み合わせながらアピールしていきましょう。
経理のスタッフがすでに何人もいるような大手の企業を狙うとすれば、簿記の資格を保持していることはあまりアピールポイントにならないでしょう。1・2級など難易度の高い級であれば話は別ですが、3級以下ではアピールは難しいです。大手企業は雇用している人員が多く、優秀なスタッフも多く抱えていると考えられます。また、大手企業は応募者が多く集まることも予想できます。このような状況下においては、それほど取得が難しくないレベルの簿記資格は目立ちにくく、ほぼアピールは無理です。
ただし、社員がそれほど多くない小規模な会社であれば資格の難易度はそれほど高くなくても、簿記の資格を有している経理スタッフを置きたいと考える可能性はあります。経理の経験などが同じくらいの応募者の中であれば、資格は持っている人の方が有利になってきます。難易度の高い簿記資格を持っている人は大手企業を狙う可能性が高いので、少し規模が小さい会社への就職を目指すのは1つのテクニックです。
簿記の資格を就職に活用する際、最も注意すべきなのは、資格に頼り過ぎないことです。これは簿記に限らないことですが、企業は応募者の資格だけを見ているわけではありません。どれだけ難易度の高い資格を有していても、例えば仕事への意欲や人柄などに問題点などがあれば採用されない可能性があります。資格はあくまでその人を判断するための材料の1つ。多くの企業が採用したいと考える人は、全ての水準がバランス良く高い人材です。簿記1級を持っていたとしても、それをアピールするだけでは不十分です。簿記の資格も含めて、トータルで自分を効果的にアピールしていくこと、これが就職活動で重要と言えます。